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5Sが定着しない原因は仕組みにあり!リバウンドしない定着化ガイド

製造業の現場で5S活動に取り組んだ方の多くは、「最初は整理整頓できていたのに、いつの間にか元に戻ってしまった」という悩みを抱えているのではないでしょうか。

私は製造業勤務の経験から、5S活動が定着せずリバウンドする現場を何度も目にしてきました。問題は従業員のやる気ではなく、定着させる仕組みが整っていないことがほとんどです。

5Sが定着すれば、経費削減や売上増加により、会社経営の安定化が実現します。

この記事では、5Sが定着しない原因を明らかにし、リバウンドしない定着化の具体的な方法をお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

  • 5Sが定着しない原因
  • 定着させる5ステップと実践的なコツ
  • 5S定着による経営効果

5Sが定着しない理由は?

5Sが定着しない背景には、明確な理由があります。単に「やる気がない」「続かない」だけではなく、組織の仕組みや意識に根本的な問題が隠れているのです。

  • ・ルールが存在しない
  • ・トップやリーダーの本気が見えない
  • ・通常業務が忙しくて後回しになる

これらの理由を具体的に見ていきましょう。

ルールが存在しない

5Sが定着しない原因のひとつに、現場にルールが存在しないことがあります。判断基準がない環境では、従業員は「この工具はどこに戻すべきか」「この書類は必要か不要か」といった判断を毎回迫られます。

例えば、工具の保管場所が決まっていない工場では、作業者が「今日はここに置こう」と自己判断を繰り返すでしょう。この小さな判断の積み重ねが「面倒」と感じるようになり、従業員は5S活動自体を避けたくなってしまいます。

また、1人が適当な場所に工具を置くと、他の作業者も「この場所でいいか」と適当に収納してしまいます。

5S定着には、「決まった置き場所に戻す」といったルールが欠かせません。誰が見ても迷わない基準を設けることで、従業員の負担が減り、活動が継続します。

トップやリーダーの本気が見えない

5Sの定着にはトップやリーダーの本気度が欠かせません。リーダーが現場で動かず指示だけを出すと、従業員は「上司がやらないのに、なぜ自分だけやらなければならないのか」と感じ、活動が形だけのものになってしまいます。

例えば、現場リーダーが5S活動を指示しながら、自分のデスク周りは書類が山積みという状況では、従業員は誰もついていかないでしょう。

また、経営者が強いトップダウンで推進し、自ら現場で以下のような行動を実践することで、従業員は活動の大切さを理解します。

  • ・床のゴミを拾う
  • ・工具を定位置に戻す
  • ・設備の油汚れを拭き取る

経営者が5Sを経営戦略として位置づけ、業務時間内に活動時間を確保することも必要です。口だけではなく、行動と仕組みで示すことが5S定着には欠かせません。

通常業務が忙しくて後回しになる

業務の忙しさを口実に5S活動を後回しにすることは、5Sが定着しない原因のひとつです。5Sの後回しは、さらなる多忙を生み出す悪循環につながります。

例えば、製造現場で工具の置き場所が決まっていないと、作業者は「この工具はどこだ」と探す時間が毎回発生します。1日5分の探し物でも、年間の営業日を250日とすると1,250分、つまり約20時間以上の損失です。

複数の従業員が同じ状況なら、損失時間はさらに膨らみます。

整理整頓されていない職場では、間違った部品を使うミスも起きやすく、やり直し作業が発生します結果として業務時間がさらに増え、5Sに取り組む時間がますます失われる悪循環に陥るでしょう。

5Sを定着させるための5ステップ

5Sを定着させるには、単に活動を始めるだけでは失敗に終わります。明確な手順に沿って、段階的に組織へ浸透させることが欠かせません。

目的の言語化から習慣の文化化まで、確実に定着させるための5つのステップを、順を追って見ていきましょう。

5S定着化ロードマップ

5S定着化の5ステップ

STEP 01

ステップ1:目的の「言語化」と2Sの開始

5S定着の第一歩は、活動の目的を言語化し、整理・整頓から始めることです。従業員が「なぜ5Sをするのか」を理解していないと、単なる掃除と捉えて形だけの活動になってしまいます。

例:「探し物の時間を減らして年間100時間の業務効率化を目指す」といった具体的目標が必要です。

整理では、机や棚のモノを一度すべて出す「全部出し」を実施します。必要なモノだけを残し、不要なモノを処分することで、管理の負担を減らすことが可能です。

整理が完了したら、次は整頓に取り組み、誰が見ても「どこに何があるか」がわかる状態を目指します。

STEP 02

ステップ2:ルールの可視化

5Sを定着させるには、従業員が理解しやすいルールにすることが大切です。従業員が「正しい状態」を判断できなければ、すぐに散らかった状態に戻ってしまいます。

「工具は棚に戻す」というルールがあっても、場所が決まっていなければ迷いや、人による解釈の差が生まれます。結果として工具を探す時間が増え、効果を失いかねません。

誰が見ても迷わず判断できる仕組み(可視化)を作ることで、従業員の負担が減り、整理されている状態が継続します。

STEP 03

ステップ3:通常業務に組み込む

5Sの定着には、活動を通常業務の一部として組み込むことがおすすめです。「時間があるときにやればいい」という意識を排除します。

「毎日、昼休憩前から10分間、担当エリアを整理整頓する」「工具を戻してから退勤する」など、業務の工程に組み込みます。

また、数ヶ月に一度の「5S集中日」を設け、普段手が回らない場所を改善します。日常の小さな活動と定期的な集中活動の組み合わせが重要です。

STEP 04

ステップ4:社長が現場を回る

リーダーが確認しなければ、活動は形骸化します。社長は定期的に現場を見回り、現状を把握してください。乱れがあれば写真を撮るなどして、具体的かつ建設的なフィードバックを行います。

重要なのは責めることではなく、「なぜ乱れたのか」をヒアリングすることです。作業時間や費用の課題を理解し、改善を支援します。改善後に「きれいになりましたね」と声をかけることで、従業員のモチベーションが高まります。

GOAL

ステップ5:習慣を文化にする

5S定着の最終段階は、ステップ1から4を継続して回し続けることで習慣を組織文化にすることです。精神論ではなく、仕組みの継続が「意識しなくてもできる状態」を作ります。

  • ステップ1:目的を言語化する
  • ステップ2:ルールを可視化する
  • ステップ3:業務に組み込む
  • ステップ4:社長が巡回する

このサイクルを半年、一年と続けることで、新入社員も「この会社では5Sが当たり前なのだ」と学びます。習慣が次の世代に引き継がれ、強固な組織文化として定着するでしょう。

5Sを定着させるコツを紹介

5Sを確実に定着させるには、ステップに加えて以下のような実践的なコツがあります。

  • ・工具の定位置を可視化する
  • ・経営者の強いトップダウン
  • ・成功事例を共有して評価につなげる

これらの視点から、定着を加速させる具体的な方法を見ていきましょう。

工具の定位置を可視化する

5Sを定着させるには、物の定位置を見てわかるようにする工夫が必要です。

従業員が「どこに戻すべきか」を毎回考える状況では、判断に時間がかかり、整理整頓が続きません。

置き場所を固定する仕組みとして「形跡管理」がおすすめです。形跡管理とは、物の形を棚や床に描いて定位置を示す手法です。

例えば、工具棚にスパナやドライバーの形を縁取って描きます。従業員は形を見るだけで「ここに戻す」と判断でき、迷いがなくなります。

持ち出した人の名前札を工具の定位置に貼る方法もおすすめです。工具が定位置に戻っていない場合は、名前札を置いた人に確認することで、すぐに見つけられるでしょう。

物の定位置を可視化することで、従業員は「どこに何があるべきか」を一目で判断できます。

経営者の強いトップダウン

5Sの定着には、経営者が強いトップダウンで進めることが欠かせません。経営者が5Sを単なる掃除と捉えていると、従業員も「やらされ仕事」と感じてしまいます。

経営者は5Sを経営戦略として位置づけて、予算と時間を確保することをおすすめします。

例えば、「毎週金曜日の午後1時間を5S活動に充てる」とスケジュールを組んでみてください。また、5S活動に必要な工具棚や整理用品を実際に購入し現場に配置することで、「会社が本気で取り組んでいる」と従業員に伝わります。

経営者自らが現場で整理整頓を実践することも必要です。社長が工場の床を掃除したり、デスク周りを整理したりするといった行動を見せることで、従業員は「トップが率先して動いている」と理解します。

経営者が行動で示すことは、従業員も「本気で会社をよくしたい」という気持ちにつながっていくでしょう。

成功事例を共有して評価につなげる

5Sの定着を実現するには、成功事例を共有して評価につなげる仕組みが必要です。

例えば、月に一度の全体会議で「5S優秀チーム」を表彰し、チームごとに競い合わせることで従業員の意欲を高めます。

表彰チームが改善前と改善後の写真を使って改善のポイントを発表したり、他のチームと議論する場を設けたりすることで、良い現場改善が横展開されます。

写真を使うことで成果が一目でわかり、従業員の達成感を高めることが可能です。ライバル関係にしながらも情報交換を促すことで、組織全体の5Sレベルが向上するでしょう。

また、年に一度の従業員全体会議では、5Sの成果を上げた従業員を個人表彰し、金一封を授与します。従業員のモチベーションが高まり、5S定着が進みます。

5Sの定着がもたらす経営効果

5Sの定着がもたらす効果は、きれいな職場だけではありません。以下のような経営の根幹に直結する成果を生み出します。

  • ・採用活動の強化
  • ・業員の定着率向上
  • ・経費の削減

具体的にどのような経営効果が得られるのか、見ていきましょう。

採用活動の強化

5Sの定着は採用活動に大きな効果をもたらします。求職者にとって職場見学は企業の実態を判断する一つの判断材料です。

整理整頓された環境は「この会社で働きたい」という求職者の気持ちを高めます。

例えば、工場見学に来た際に、床にゴミが落ちていない清潔な現場を見ると、「きれいな職場で働きやすそうだ」と求職者は感じるでしょう。

反対に、工具が散乱して書類が山積みの職場を見ると、「汚くて働きたくない」と判断し、応募を避けるきっかけになってしまいます。

また、整理整頓された職場の写真や動画を採用サイトに掲載することでも、応募数の向上が期待できます。

5S定着による整理された職場は、人材を引きつけるアピールポイントです。

従業員の離職率低下

5Sの定着は従業員の離職率の低下が期待できます。整理整頓された職場は、従業員のストレスが減り、働きやすさが向上するためです。

例えば、工具が決まった場所に置かれている工場では、従業員は探し物に時間を使わず、作業に集中できます。

また、5Sの定着によって生産性が向上した結果、残業時間の削減が期待できます。その結果、ワークライフバランスが向上し、従業員が転職を考える機会を減らせるでしょう。

新入社員にとっても、整理整頓された職場は働きやすい環境といえます。「どこに何があるか」がすぐにわかるため、職場に早く馴染めて離職するリスクを減らすことが可能です。

5Sの定着により、従業員の定着率が高まり、離職率の低下につながります。

経費の削減

5Sの定着はコスト削減につながります。整理整頓により、従業員が工具や書類を探す時間が削減され、人件費の無駄を減らせるためです。

探し物にかかる時間と人件費の損失を以下の表にまとめました。

1日あたりの
探し物の時間
1か月の損失時間
(営業日22日)
1年の損失時間
(営業日250日)
年間人件費の損失
(時給1,500円)
5分 110分 約21時間 約3.1万円
10分 220分 約42時間 約6.3万円
15分 660分 約125時間 約18.8万円

これらは従業員一人あたりの損失です。探し物をしている従業員が3人、5人と増えれば、損失額はさらに膨らみます。例えば、10人の従業員が1日10分ずつ探し物をすると、年間

約63万円の損失です。

また、整理整頓されていない職場では、在庫があるのに発注してしまう無駄が発生します。例えば、以下のような備品が机の引き出しや倉庫の奥から出てきます。

  • ・ボールペン
  • ・ホッチキス
  • ・軍手

在庫を把握できずに重複して購入してしまい、必要のない備品を購入することで、経費をさらに膨らませてしまいます。

5Sの定着により、探し物の時間と重複購入による無駄なコストが削減され、営業利益の向上が期待できるでしょう。

営業活動の材料になる

5Sの定着は売上の増加につながります。取引先が工場見学に訪れたとき、整理整頓された現場を見せることで信頼を獲得できるためです。

顧客との新規取引前には、必ずと言っていいほど工場見学が実施されます。

床にゴミが落ちておらず、工具が定位置に整然と並んでいる現場を見た顧客は、「この会社はしっかり管理されている」と好印象を抱くでしょう。

また、5Sを進めて工場をショールーム化することで、新たな売上機会が生まれます。他社から「5Sの進め方を教えてほしい」と相談されれば、コンサルティングサービスとしての展開も考えられます。

また、自社で開発した整理整頓の仕組みやツールをバックエンド商品として販売することも可能です。

整理整頓されたきれいな工場は、それだけで強力な営業の材料になります。

顧客満足度を高める

5Sの定着は顧客満足度を高めることにつながります。

整理整頓により作業ミスが減り、製品の品質が安定することで、顧客に安定した製品を提供できるためです。

例えば、工具が定位置に置かれている工場では、作業者が間違った工具を使うミスを防げます。正しい工具で作業することで、顧客が要求している品質の維持が可能になり、不良品の発生が減ります。

また、清掃を徹底することで設備の異常を早期に発見でき、機械の故障を未然に防ぐことが可能です。その結果、機械停止による納期遅延を予防できます。

さらに、設備トラブルによる不良品の発生も防げるため、不良品が市場に流出するリスクを回避できるでしょう。

5Sの定着により品質と納期が安定し、顧客満足度の向上が期待できます。

H2 よくある質問

5S定着FAQ | 現場改善ガイド

5S定着のためのよくある質問

「もったいなくて捨てられない」と判断が進まない場合は?

「赤札作戦」を実施しましょう。「赤札作戦」とは、判断に迷う物品に赤い札を貼り、別の場所に一時保管する手法です。

「1年間使っていないモノは処分する」という基準を設け、期限内に使った物品は赤札を剥がして元に戻し、使わなかった物品は処分します。

期限を設けることで判断が明確になり、5S定着が進みます。

私物はどこまで許可すべきですか?

私物は原則として作業場に持ち込まないルールを設けましょう。スマートフォンなどの私物が作業の妨げになり、注意散漫による事故のリスクが高まります。

作業場の近くに小型ロッカーを設置し、私物の保管場所を提供します。緊急時の連絡体制を整備することで、従業員の不安を解消し、5S定着が進みます。

繁忙期は5S活動を一時中断してもいいですか?

繁忙期でも5S活動を中断しないことをおすすめします。やったりやらなかったりを繰り返すと、従業員は「忙しい時は5Sをしなくていい」と判断してしまいます。

「忙しい時は5分間だけ5S活動をする」などの「ミニマム5S」を続けることで、習慣が途切れず、5S定着が保たれます。

5Sの定着は仕組み次第で実現できます

5S定着で重要なポイントは以下の3つです。

この記事のポイント

  • 定着しない原因を把握する
  • 5ステップで段階的に進める
  • 可視化とトップダウンで推進する

5Sが定着すれば、探し物の時間が削減されて経費が抑えられます。整理整頓された工場は顧客の信頼を獲得し、受注率が向上します。

5Sの定着は、精神論ではなく仕組み次第で実現が可能です。まずはステップ1の目的の言語化から始めてみませんか。

小さな一歩が、経営安定化への大きな成果につながります。

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